資料(3):北京での主要官庁ヒアリングメモ(フォローミッション)
【調査目的と訪問機関】
・ | 対中経済援助の中国側所管中央官庁において、中国では日本の対中援助の経済効果をどのように分析・評価しているか、について、担当者と意見交換を行ったほか、中国側有識者(前国際貿易研究所所長)や日本の国際協力銀行、国際事業団の北京代表、日本大使館経済部との意見交換も行った。この際、円借対象プロジェクトは中日青少年交流センター、十三陵発電所のサイトを視察した。 |
【中国側の関心度と全般的印象】
・ | 訪問時期が、対中ODA問題の方向性が出た直後(2000年末の「対中懇談会」、3%カットの議論など)であったがゆえに、中国側の関心がその点に集中したことと、中国が西部開発への重点投資を決定したことなどにより、西部開発への日本の援助を求める意見が多く見られた。しかし、インフラと沿海を対象とする方向性については多くの異論が唱えられ、西部開発でのインフラ建設への日本の援助を期待する声が大きかった。 |
・ | ODAの3%カットについては、基本的に理解を示したものの、対中については大幅削減はもとより、3%カットも特別配慮をほしい、旨の発言が目立った。 |
・ | 「積み上げ方式」、「提案型」あるいは地方政府との交流については、中央政府各部が警戒的であった。今後は、「沿海」と「西部」の地理的配分と「インフラ」「人材」「環境」などのテーマ別配分との組み合わせ、あるいは「有償」「無償」「技術協力」あるいは民間投資などとの調整が必要との意見があった。 |
【対中懇談会提言へのコメント】
・ 対中懇談会提言について、中国側の意見では、以下のような点に異論が投げかけられた。
(1) | これまでの対中ODA実施の評価・成果がきちんとできてはいない(財政部)。 |
(2) | インフラ建設をODAの対象からはずすことには異論がある。西部地域におけるインフラ投資は必要(財政部、科学技術部、対外貿易経済合作部)。 |
(3) | 同様に、沿海をODAの対象からはずすことも問題。沿海の都市問題(例えば、北京や上海などの都市交通混雑緩和のためのライトレール郊外電車の敷設)、環境対策、貧困対策など沿海部にも多くの課題がある。また、沿海部でも、農業バイオ研究などの技術協力必要項目がある。(科学技術部)。 |
(4) | 中国の自助努力についての指摘もあるが、中国でも沿海部各省が内陸部の支援を受け持っているほか、中央各部(例えば、外交部が貴州省、科学技術部が陝西省を支援する分担)も内陸支援を行っている。したがって、沿海への人的支援が内陸を支援することにもなる。具体的には、沿海部に人材教育センターのようなプロジェクトを設置し、その沿海部に西部からの人材を受け入れるなどの方法が考えられる。(科学技術部)。 |
・ | 対中ODA評価については、計量的に効果を示すことは難しいが、中国の改革・開放に大きな成果を与え、外資準備残高の増加(2000年末現在で1,600億ドル)、輸出入増加(2000年は4,300億ドル)、日中貿易(800億ドル)の増加にも影響を与えた。また、インフラ建設が民間資本の導入を誘発したことも事実である(財政部)。 |
【訪問各部からの主要発言内容】
・ | 日本からの援助の予算上のウエイトは毎年18億ドル程度を維持していきたい(世銀、アジア開発銀行が10億ドル)(財政部)。 技術協力を通じて、人的交流が盛んになり、さらに市民交流につながるなど、相互理解の発展に寄与してきた。 |
・ | 日本の対中ODAは過去20年で、インフラ建設の80%、交通の50%に使われてきた。地域別に見ると、東部が50%、中西部が50%となっている。外資依存は今後とも10%前後が維持されるだろう。外資水準や輸出からみると、まだ外債を受け入れる能力や返済能力もある。しかし、国際収支ベースでみると、資本収支は赤字であり、長期的には、これを黒字化する必要がある(国家発展計画委員会)。 |
・ | 中国は現在、年間所得630元以下「貧困層」が3,000万人いる。60%が西部に分布しており、この貧困対策が重点項目である(同上)。 |
・ | 貧困対策は技術協力を通じても行われており、今後も技術協力の分野では、農業、環境対策、貧困対策が主要テーマとなろう(科学技術部)。 |
・ | 農業開発援助による一部産品(しいたけ、ネギ、いぐさ)の対日輸出の背景を証明することは難しい。北京野菜センターでは、品種改良によって、品種の増大ができ、一部を輸出しているが、これがODAによるものとの判断をすることはできにくい(同上)。 |
・ | 無償協力では、日本の援助はこれまで、90項目、1,100億ドルの実績があり、毎年5,000万ドル(56億円)であり、中国の無償協力受入の6分の1程度である。日本に次ぐのがドイツであり、8,000マルクである。無償協力は広報宣伝すればするほど、要求が高まる。ただし、中国は無償援助や技術協力の実績を統計的には発表していない(「外資導入」には含めていない:対外貿易経済合作部)。 |
【日本企業の受注率問題】
・ | 十三陵発電所は日本の有償協力によるものであるが(128億円)、設備はタービンが米国企業、発電機はオーストラリアであった。設計上は日本製を想定していたが、日本企業(三菱電機)の価格は欧米の3倍であり、発注できなかった。 |